大阪・中之島 レクシア特許法律事務所のブログです。

2015年3月19日木曜日

職務発明に関する特許法改正案が閣議決定

山田です。

すでに新聞報道等でご存知の方も多いかと思いますが、職務発明に関する特許法35条の規定を改正する「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました(今年の通常国会に法案が提出される予定)。

この1年ほど、頻繁に新聞紙上をにぎわせてきた話題でしたが、ようやく改正条文の案が固まりました。

発明者からの対価請求のリスクをなくしたいという企業側の執念(?)が結実して始まった今回の改正議論でしたが、その後、発明の帰属(使用者主義か、発明者主義か)との点に議論が移り、その後、すったもんだしてようやく今回の形に至ったという感じかと思います。

改正条文案は以下のとおりです。

(職務発明)
第三十五条
1 (略)
2 従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ、使用者等に特許を受ける権利を取得させ、使用者等に特許権を承継させ、又は使用者等のため仮専用実施権若しくは専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。
3 従業者等がした職務発明については、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属する。
4 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させ、使用者等に特許権を承継させ、若しくは使用者等のため専用実施権を設定したとき、又は契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等のため仮専用実施権を設定した場合において、第三十四条の二第二項の規定により専用実施権が設定されたものとみなされたときは、相当の金銭その他の経済上の利益(次項及び第七項において「相当の利益」という。)を受ける権利を有する。
5 契約、勤務規則その他の定めにおいて相当の利益について定める場合には、相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、相当の利益の内容の決定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより相当の利益を与えることが不合理であると認められるものであつてはならない。
6 経済産業大臣は、発明を奨励するため、産業構造審議会の意見を聴いて、前項の規定により考慮すべき状況等に関する事項について指針を定め、これを公表するものとする。
7 相当の利益についての定めがない場合又はその定めたところにより相当の利益を与えることが第五項の規定により不合理であると認められる場合には、第四項の規定により受けるべき相当の利益の内容は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。


あらためて改正条文案を見てみると、新聞で大騒ぎしていたほどのドラスティックな改正にはなっていないような気がしてなりませんが…

新設される35条3項により、職務発明が会社に原始帰属する形のルールを設定することが可能になります(これにより、産構審で議論されていた二重譲渡の問題はクリアになります。)

一方、対価に関しては、改正条文案でも発明者が「相当の利益」(現行法では「相当の対価」)を請求する権利は残るため、会社側の訴訟リスクが完全に消えるわけではないように思われますが、今後、定められる「指針」の内容によって、ある程度の基準が定まっていくことになると思います。

2004年の特許法改正後、私も、色々な企業(大企業、中小・ベンチャー企業)や大学等の職務発明規程の改訂を担当させていただきましたが、今回の改正法が施行された場合、再度、職務発明規程を改訂する必要が生じるかと思います。

せっかく作った規程をさらに修正しなくてはいけないのは少しさびしくもありますが、どのような改訂をするのが適切かに関し、今から作戦を練りたいと思います。


山田威一郎

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2015年3月12日木曜日

立体商標の新たな活用方法

松井です。

今日の記事は、昨晩のJIPA講師懇談会の宴中に、私の挨拶の中で申し上げた内容です。ブログでも少し紹介したいと思います。

ここ最近、私は、3月18日の日本商標協会開催「新しい商標のシンポジウム」に向けて、講演資料作成に取り組んでいます。
そこでの私の講演は、新商標、立体商標などを活用した権利取得の戦略的な部分ですので、新商標や立体商標の活用方法をシミュレーションしながら考えています。

知財活用のメインは、権利行使ですが、
新商標や立体商標の場合、少し事情が変わってきます。

ネットニュースなどでよく見るように、
立体商標(文字なしの商品形状の立体商標)は、企業のPRによく使用されています。ネット上でも各種ニュースに取り上げられて、定番商品の再注目効果は大きいと思われます。

【ヤクルト・ヤクルト容器の立体商標】
ヤクルト容器の立体商標が認められる
http://www.yakult.co.jp/news/article.php?num=515

【Honda・スーパーカブの立体商標】
「スーパーカブ」の形状が日本で立体商標登録認可 ~乗り物として初の快挙達成~
http://www.honda.co.jp/news/2014/c140526.html

【ショウワノート・ジャポニカ学習帳の立体商標】
当社学習帳の形状が立体商標登録
http://www.showa-note.co.jp/press/140801/



ここまでは、皆さんもご存知の通りですが、
Hondaは、やりました。
さらに進んで、立体商標登録記念の限定商品の販売!
(2月12日のニュースリリースです。少し遅れての掲載ですが。。)

「リトルカブ・スペシャル」を限定発売 ~スーパーカブの立体商標登録を記念して~
http://www.honda.co.jp/news/2015/2150212-littlecub.html
「Hondaは、スーパーカブの立体商標登録を記念し、特別カラーを採用した「リトルカブ・スペシャル」を受注期間限定で2月13日(金)に発売します。」(前記リンク内の記事より抜粋)



この特別限定のリトルカブ・スペシャルのラベルには、堂々と「立体商標登録」の文字が!!

権利行使という活用方法に至るまでもなく、PRに大きく使え、さらには限定モデルの販売。まさに、これが商標の広告宣伝機能というべきものでしょうか。
立体商標、恐るべし。

次は、どの立体商標(または新商標)が、限定モデルを出すか、楽しみです。

松井宏記


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2015年3月9日月曜日

外国団体からの日本意匠に関する質問状

松井です。

日本商標協会等の活動として、日頃付き合いのある外国代理人に、
当該国における特定制度のQ&Aを投げて、回答をいただいた後に、それを纏めるという作業は何回かしたことがあります。
いつも、外国代理人の方々からは、丁寧に回答いただいて感謝していました。

が、今回、逆に、外国の有名団体から私に、
各国の意匠制度の活用についてQ&Aを用意したから、日本パートを回答いただけないかとの連絡がありました。

もちろんOKしました!
今度は、私が丁寧に回答せねば。。

そこで、統計的なところについては、無効審判、侵害訴訟の統計を集めています。
無効審判の統計は、特許年次報告書2014である程度は出ますが、
意匠権侵害訴訟の統計って、ネット上には全くないですね。。

司法統計知財高裁の統計はありますが、かなりざっくりです。
事の性質上、あまり詳細には出せないのか。。
そもそも出訴件数から請求認容や請求棄却を割り出したところで、和解事件は含まれていないので、意匠権侵害訴訟での一般的な勝率を求めようとするのは無理があるのかもしれません。

ちなみに、CAFCでの種別の統計は、こんな感じです。
確かにこれ以上は難しいかも。。

CASELOAD, BY CATEGORY
Pie charts for caseload divided into primary categories: intellectual property law, money suits against the government, and administrative law.


出典:http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/Statistics/fy%2013%20filings%20by%20category.pdf

こうなれば、調査対象期間の意匠権侵害訴訟の判決を全て調べて(そんなに多くないはず)、自分で統計を作るしかありません!(または、弊所の弁護士集団の情報収集力でなんとかしてもらうか。。)

きっと有効な資料になるはずです。

松井宏記

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